2011年11月03日
「東電解体―巨大株式会社の終焉」 奥村宏著 東洋経済新報社(お薦め書籍)
東電解体―巨大株式会社の終焉
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「東電解体―巨大株式会社の終焉」 奥村宏著 東洋経済新報社 を読んでいる。
3月の福島原発事故以来、日本国民は、いや世界中の人々が、「フクシマ」に注目したことであろう。
ドイツ、スイス、等の国が 脱原発の明確な方針に転換していくことになる。
イタリア、ローマでは、「フクシマ、チェルノブイリ、スリーマイル、 安全な核はウソだ!」という横断幕をかかげて国民がデモ行進した。 国民投票によってイタリアでは、原発の新規建設、再稼働をすべてストップすることが決定された。
この本は、そもそも日本で何故 危険な原発が54基も作成されることになったのかという歴史、そして何故 東京電力は、安全対策を怠ったのか? というポイントから、巨大株式会社の終焉というポイントも書かれている。
3月以降、多くのマスコミ、書籍、インターネットで読んできた情報が、この1冊でよりよく理解できる貴重な書籍である。
私がチェックしたポイントは、
1)電気料金は、電力会社によって一方的に決められて消費者に押しつけられている。
その算定基準は、必要原価に利潤を加えた積み上げ方式になっている。よって原子力発電のコストが高くなればなるほど、我々国民の電気料金は上がり、東京電力は、利益が増えるシステムであること。
2)政治献金の実態
「中央、地方の政治家への実質的な資金提供は、多くの場合ゼネコンが代行した。原子力立地をめぐる地元有力者の国内外視察も、ゼネコンが飛行機やバスをチャーターし、原子力施設の建設見積もりに上乗せして東電に請求する。東電はこれらを総括原価に組み込み、電気料金として国民から徴収する。」
すなわち東電は政治献金を表に出ないゼネコンを通じて実施をしてきた。
その請求は利益を乗せて我々国民の高い電気料金となって払わされているのである。
3)東大では「原子力政策を批判したら村八分にあい、東京大学では助手を17年間やっていた。講演に行けば尾行がつき、研修医と称した東京電力の社員に隣の席で見はられ続けた。」 東京大学工学部原子力工学科1期生安斎育朗氏は語る。 その後「カネは出すから3年間アメリカに留学してくれ」と言われる。
原子力の安全性に課題を投げる学者は、徹底的に排除される。このことにより、安全対策は、なされないという危険な実態をまねくことになる。「原発は安全だ!」という国民を騙すキャンペーンの始まりである。
4)東京電力は、年間広告宣伝費として、234億円、販売促進費として、238億円、普及啓発費として、200億円が計上され、その多くがマスコミ、メディアに流されている。 福島原発事故の直後には、「マスコミ封じのため」週刊誌に8000万円を払ったと言われる。
電力独占企業の東電は、CM広告の必要はない。それが巨額な広告費がメディアに流れている。
おかしな話である。これもすべて我々国民が高い電気料金として払わせられている。
5)東電危機は企業改革のチャンス
それは国民的課題であり、政府が先頭に立って企業改革を推し進めることが必要である。
既存勢力(原子力村といわれる)には退場願って新しい「ニューディール政策」のようなものが必要になる。
日本の原子力の歴史と現状がよく理解できる1冊である。多くの方に読んでいただきたい。
感謝!