2023年01月10日
ビジネスを進めるうえで、Do the right thingがなぜ重要なのでしょうか。
決断力向上の秘訣2)
ビジネスを進めるうえで、Do the right thingがなぜ重要なのでしょうか。
ビジネスを進めるうえで、Do the right thingがなぜ重要なのでしょうか。
まず言えることは、嘘をつかない、騙さない、盗まない、法律を守る、約束を守る、ルールを守る、正直・誠実であるということは、ビジネスマンの前に、人としての原理原則です。ここがぶれてしまうと、儲けるためならたいがいのことをしてよい、ということになりかねません。
近年、企業のコンプライアンスの問題がよくマスコミで騒がれています。日本を代表するメーカーが決算の数字を偽ってしまったケース、あるいは、大手企業が実験の数字を操作していたことが発覚したケースなどがありました。
これらは、単なる過失や職務怠慢ではなく、関係者はルール違反であることを承知していながら行っていたものです。かといって、悪意があるわけでもない、というのがこの問題の重要なポイントです。「本当はこんなことを続けていたらいけない」とわかっていながら、業界の慣例、あるいは、もっとひどい事態になることを避けるために、ずるずると続けてしまっていたというもので、まさに決断できなかったことにより起こった問題なのです。
嘘をつくのはよくないことだとわかっていても、馬鹿正直に本当のことを言ってしまえば会社や自分の立場が危うくなるだけでなく、関係者、取引先などいろいろなところに迷惑がかかってしま。後で辻褄を合わせれば済むことであり、下手に青臭い正義感をふりかざして波風立てるより、結果として丸く収まるなら誰にとってもそのほうがいいはずだ――そんな心理になるのはよくわかります。
それに、このような打算的な決断をしたとしても、すぐさま問題になることはほとんどありません。表面上はいたって平穏に日々が流れています。不正をした会社も、ルール違反であることは知っていたけれど、ずっと何十年もやってきて、過去に何の問題も起きていなかったのです。
しかしながら、問題が表面化していないだけで、見えないところでずっとひずみがたまっていました。丸く収まっているように見えるのは錯覚でしかなかったのです。
大手メーカーのケースでも、決算数字が悪いことを素直に認め、正直に公表していれば、一時的には株価の低迷や事業の縮小などの混乱をともなったとしても、半面では、経営危機が社内の結束力を高め、経営改革・事業改革を促す推進力にもなったはずです。
しかし、数字をごまかしてしまったために、最初はちょっとした操作でも、不正の発覚を防ぐためにごまかし続けるしかなくなり、どんどんひずみがたまっていってしまいました。
同時に、表面的には順調な業績を達成しているため、本来、手を付けなければならないはずの経営改革が後回しになっていました。
結果として、ごまかしが表面化したときには、不正の根は広く深くはびこり、しかも、事業基盤の弱体化もどうにもならないところまで達してしまっていたわけです。
最初の躓きのとき、正しい判断ができていれば、今日のような結果を招くことはなかったでしょう。
人は、基本的に正しい行いをしたいはずだと私は思っています。しかし、現実には、正しくない行いが横行しています。そこには、正しい行いを阻害する2つの間違った価値観があります。
2つの間違った価値観とは、「ばれなければいい」、「みんなやっている」です。
どうか、この二つの価値観を、今日を限りに捨てていただきたい。
確かに、ばれなければ問題が表面化することなく、困った事態になることもありません。けれど、ばれない嘘はないと思っていただきたい。1年後になるか、50年後になるかはわかりませんが、いつかはばれます。よしんば、自分の代では隠し遂せたとしても、それはたまたまです。代替わりしていった先に必ずいつか発覚します。この場合、あなたは無事だったとしても、あなたの後を継いだ後進たちに大きな瑕疵を残すことになるのです。
時間が経てばたつほど、嘘を重ねれば重ねるほど、発覚したときの衝撃も大きくなります。あなたがほんの出来心で、「ばれなければいい」と始めてしまった小さなごまかしが、後の世代にとって、積み上げてきたものすべてを滅ぼしかねない災禍になるかもしれません。
そんなリスクをわかっていながら、つい嘘をついてしまう理由がもう一つの価値観、「みんなやっている」です。
前任者もやっていた、先輩もやっていた、同僚もやっている、同業者もやっている、それなら自分もやっていいだろうという心理が、ルールを破る気まずさを鈍らせるのです。
前任者や先輩が正しくない判断をしていたとしたら、自分の代でとめなければなりません。みんながやっていても、自分だけは正しい判断をしなければなりません。
なぜなら、正しくない判断は、自分を苦しめ、自分の後に続く者に災禍をもたらし、自分の所属する組織を弱くするからです。目の前の問題はやり過ごせたとしても、必ず最後には最悪の結果に至るのです。