達成可能
2023年01月21日
「具測達一」の目標設定の原則の「達成可能」とは
「具測達一」の目標設定の原則の「達成可能」とは
目標値というのはそもそも達成可能でなければなりません。物理的に不可能な夢みたいな数字ではだめだということです。かといって、ちょっと頑張れば達成しそうな無難な数値というのもだめです。高いビジョンを示し、どうにか達成できる目標を必死になって考えることが重要です。
私自信の経験でいうと、P&Gが買収した化粧品会社、マックスファクター化粧品の営業部長をやっていたときのことを思い出します。
金沢の大きなショッピングセンターにマックスファクターが出店することになり、金沢担当の営業は張り切っています。そこで、従業員みんなが結束できるようなビジョンがほしいと思った私は、金沢担当の営業と一緒に、「施設内の化粧品店の中で売上ナンバーワンを目指そう」というスローガンを発表しました。
これがいかに無謀なビジョンかというと、このとき、ショッピングセンターに出店していた化粧品ブランドは、資生堂、カネボウ、コーセーといったいずれも国内トップブランドの面々です。
売上規模で言えば、マックスファクターはその中で断トツの最下位でした。宣伝量も販売員数も販促費もまったくかないません。そんな中で「ナンバーワンを目指す」などと言えば、よほど業界事情に疎いか、そうでなければただの大ぼら吹きです。
でも、現場のやる気を引き出すために、私たちはどうしてもこの無謀とも思えるビジョンを叶える必要がありました。
もちろん、普通にやればどうがんばっても無理。そこで、頭をひねってたどり着いた目標が、「1カ月だけでいいから1位になろう」というものです。年間を通して1位を獲得するのは無理でも、12カ月のうちの1回ならトップをとれるのではないかと考えました。
具体的に何をしたかというと、ショッピングセンターにかけあって、通常の売場とは別にイベントスペースを1カ月特別に貸してもらい、セール品を大量に陳列。普段は月に1度しかやらない販促を毎週実施し、北陸地方の美容部員を総動員して販売にあたりました。要するにヒト、モノ、カネを集中したのです。
そのかいあって、普段の月の3倍の売上を記録。宣言通り、たった1カ月のことではあったが、実際にトップをとったのです。
私のやったことは、ほんの小さな一歩でしたが、この一歩が後にもたらした効果は大きかったと自負しています。特に「資生堂に勝った」という事実は社内に大きな刺激を与えました。どこへ出店しても最下位が定位置で、がんばって、やっと順位が一つ二つ上がるぐらいのマックスファクターが、国内トップブランドである資生堂を一瞬でも売上で抜くなど思いもしていなかった時代のことです。
それが、ほんの一カ月といえ、実際に抜きました。負け癖がついていた従業員たちに、「やればできる」という意識が芽生えたのです。